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新館長就任のご挨拶

館長 長岡英司

長岡英司写真  この4月に前任者の杉山雅章の後を継いで当館の館長に就任いたしました長岡英司(ながおか ひでじ)と申します。個々の職員が知恵と力を発揮して仕事に励めるよう、そして、その結果として当館の魅力が向上するよう、いささか力不足ではありますが、館長の務めを果たして参る所存です。何卒よろしくお願い申し上げます。
 私は、東京生まれの現在66歳の視覚障害者です。盲学校在学中の12歳のときに完全に失明しました。当時の盲学校では、まだ録音図書はほとんど使われておらず、いわば点字一色の世界だったと記憶しています。点字受験で大学の数学科に進学してからも、学業の主要な手段は点字でしたが、丁度当時始まった公共図書館での対面朗読サービスにも大変に助けられました。この大学時代以後、今日に至るまで、多くの点訳者や朗読者の皆様に、様々な場面でお力添えをいただいてきました。
 大学院の修士課程を修了した後は民間企業で、墨字(普通の文字)を触覚で読み取るための電子装置に関する仕事を2年半ほど行いました。転職したリハビリテーションセンターでは、電子計算機科の職業訓練指導員として、視覚障害者の就職や復職を支援する仕事に10年余り従事しました。その後は、視覚障害者と聴覚障害者を対象とする大学で、情報処理教育や修学支援の仕事に、教員として26年間携わりました。そして、当館で働き始めたのは昨年の4月です。
 この数十年を振り返りますと、視覚障害者の生活は、IT(情報技術)の進展とその活用で、大きく様変わりしました。読書を巡る状況も例外ではありません。点字図書は、電子データでも提供されるようになり、従来の紙の点字図書では避けられなかった不便さから解放されました。録音図書は、朗読のデジタル録音をデイジー(DAISY:Digital Accessible Information SYstem)形式のデータに編集した音声デイジー図書になり、アナログ録音のテープ図書に比べて利便性が飛躍的に向上しました。このほかに、墨字の電子データを合成音声で読み上げさせて音声デイジーと同じ操作で聴く、テキストデイジー図書も増えています。テキストデイジーは、再生手段を選べば、音声読み上げだけでなく、点字への自動変換や文字の拡大表示もできるため、障害の程度や目的に応じて複数の使い方やそれらの併用が可能です。
 視覚障害者用の図書は、このように電子データ化が進みました。それに伴って、図書を製作する方法も変わりました。点字図書は、パソコンでの点訳で製作されるようになり、用紙に直接に点字を打つ点訳は、今ではほとんど行われていません。音声デイジー図書もテキストデイジー図書も、パソコンを使って製作されています。図書製作の担い手であるボランティアの皆様は、これらの新しい方法や手段を前向きに受け入れてこられました。そして、読書ニーズの多様化に対応するために、多彩な図書等の点訳・朗読・電子データ化を手がけてくださっています。こうしたご尽力が視覚障害者の読書の可能性の拡大に、より有効に生きるようにする取り組みを重ねることが、当館の基本的な使命の一つです。
 一方、電子データ化された図書の利用には、点字電子機器やデイジー機器を使う必要があります。また、パソコン等の情報機器とインターネットを活用できることが有効です。しかしながら、それらによる可能性や利便性をまだ享受していない視覚障害者が少なくありません。そのような皆様を対象に、読書に役立つ機器類の情報を提供することや、利用技術の習得を支援することも、当館の重要な役割です。
 視覚障害者の読書環境や情報環境の改善には、これらをはじめ、多面的な取り組みが必要です。利用者の皆様のニーズに柔軟に対応できる施設、支援者の皆様にお力添えの意義や効果を十分に実感していただける施設を目指して、職員一同、力を尽くして参ります。引き続きのご指導とご支援を、くれぐれもよろしくお願い申し上げます。
(平成29(2017)年4月)


※前館長杉山雅章は、川崎市視覚障害者情報文化センター長に就任いたしました。


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