ふれる博物館

開館にあたって『ふれれば 目 開く想い』

 日本点字図書館は、創立以来、「読書のよろこび」に重きをおいて、多くの視覚障害利用者に図書の情報を届けてきましたが、見えないからこその「ふれて知る愉しみ」といったものについては、用具ショップで扱うおもちゃやゲーム類を除けば、積極的な関わりを持ってはきませんでした。
 盛岡にあります「桜井記念・視覚障がい者のための手でみる博物館」や大阪の「国立民族学博物館」などでは、手で触れる美術品や工芸品などを楽しむ視覚障害者が大勢います。最近では写真に熱中する人さえおります。こうした視覚障害者の話を見聞きするたびに、当館としても、何か文化的な事業ができないかと考えていました。
 それが今回の「ふれる博物館」につながったのです。見える人の世界では、百聞は一見にしかずという言葉がありますが、私たち視覚障害者にとっては、百聞は一触にしかずということがあるのです。まさに、ふれれば 目 開く想いを抱き、聞くだけでは分からない豊かな情報を得ることができるのです。
 今後どのように発展させていくかが課題ですが、現代の技術を使った展示品や歴史的資料の収集や、本間一夫記念室等と相まって、当館の基礎的な文化の発信などに努めていきたいと考えております。

社会福祉法人日本点字図書館 会長 田中徹二


※ この博物館のスペースは、2010年に地元高田馬場の篤志家、池田輝子様よりご寄贈いただいたものです。
  池田様は2020年4月にご逝去されました。謹んでご冥福をお祈り申しあげます。

ふれる博物館の目的

松本城
石垣から天守閣まで触れる松本城

 視覚障害者が、触察に適したアレンジを施した絵画や建築、また近現代の盲人生活用具などを触って楽しめる「ふれる博物館」です。文字としての点字や音声だけでは伝えきれない触覚情報を提供することで、視覚障害者情報提供施設としての事業の拡充を図り、もって視覚障害福祉の向上に寄与することを目的とします。

ふれる博物館の構成

企画展示

 西早稲田で「手と目でみる教材ライブラリー」を主宰している 大内進 氏(国立特別支援教育総合研究所研究員)が所蔵しているコレクションを中心に、ふれる美術作品や模型の展示をします。

常設展示

 大内氏所蔵のレオナルド・ダ・ヴィンチの壁画「最後の晩餐」のレリーフを展示します。作品はイタリアのアンテロス美術館が製作した石膏によるものです。
 作品の構成、絵画の遠近法などを、空間模型などを説明し、触察で鑑賞していただけます。晴眼者も視覚からくる鑑賞だけでなく触察することで、絵画作品のあらたな理解につながります。


レオナルド・ダ・ヴィンチ『最後の晩餐』
レオナルド・ダ・ヴィンチ『最後の晩餐』
製作:アンテロス美術館(イタリア・ボローニャ) 所蔵:大内 進(手と目でみる教材ライブラリー)

視覚障害者生活用具の保存資料について

オープンテープレコーダー
オープンテープレコーダー

 保存している盲人用具は昭和39(1964)年、当館創立者 本間一夫 が第3回世界盲人福祉会議に出席するために渡米、訪欧した時に収集した約150点にのぼる盲人用具と、その後寄贈されたり、販売所の見本などで増えたりした物品を加え約950点を保管しています。
 収蔵されている各種の盲人生活用具が、日本点字図書館の、なによりも視覚障害者の生活、社会参画に関する貴重な歴史的資料であり、視覚障害者に関わる図書・用具などは、いずれも、視覚障害者やこれに関わる人たちの活動やその歴史を理解する上で、欠くことのできない資料です。歴史の長い日本点字図書館の歩みそのものを示す資料であり、さらには、今後の方向を考える上で重要な資料です。博物館では所蔵する資料のテーマを決めて公開するとともに、リスト化、データ化を行い、インターネットでの公開を計画しています。

博物館リーフレット

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点字版もご用意しております。