日点自立支援室ニュースレター Vol.10 2023年春号 1ページ目 ごあいさつ  早いもので4月も終わりに差し掛かり、風薫る5月に入ろうとしています。皆さんいかがお過ごしでしょうか。4月終わりから5月初めはゴールデンウィークですね。新型コロナも落ち着いていますし気候も良い時期ですから旅行やお出かけをされるかたも多いと思います。このゴールデンウィークという言葉の由来を調べると、昭和20年代の映画会社の宣伝文句がオリジナルのようです。連休で観客の入りが良かったため、この期間中に大作をぶつけるためのコピーライティングとして生まれ、それが一般にも使われるようになったのだとか。  一方、新聞やテレビなどのマスメディアではゴールデンウィークという言葉は使わず大型連休と表記することが多いです。これにも理由があって、1970年代の「石油ショック」以降、「のんきに何日も休んではいられないのに、なにがゴールデンウイークだ」といった苦情が放送局に多く寄せられたことや、「外来語・カタカナ語はできるだけ避けたい」「長すぎて表記の際に困る」などの事情があったようです。  普段何気なく使っている言葉も由来を調べると面白かったりしますね。今はパソコンやスマホなどですぐに調べられますので、ご興味のあるかたは是非訓練を受けてみてください。  さて、今回のニュースレターでも様々なお役立ち情報を紹介します。どうぞお楽しみください。 (島田 記) 2-3ページ目 歩行訓練のすすめ③ -歩く時のもうひとつのテクニック-  前回は、白杖を使って歩くときの操作技術として「タッチテクニック」について述べました。この技術は白杖を振りながら、左右の2点で路面に触れる方法でした。この方法の他に、路面から杖先を持ち上げずに、路面上をこするように弧を描きながら歩く方法があります。路面に常に触れていることから、英語ではコンスタント・コンタクト・テクニック(constant contact technique)と呼ばれます。日本ではスライド法とか常時接地法と呼ばれることがあります。路面から石突を持ち上げないで左右に振るだけなので、タッチテクニックよりも簡単だと思われるかもしれませんが、実際はそうとも言えるし、そうでないとも言えるかもしれません。  その理由は、普段歩く屋外の路面は思いの外ザラザラしていて摩擦が大きく、白杖の先端に付いている石突がスタンダードと呼ばれる細いものだと引っかかりやすく、リズムよく振ることがとても難しいからです。そんな理由から、昔はこの技術は場所や目的を限定して使われていました。その場所や目的とは路面の段差や落ち込みがありそうな場所で、それらをいち早く見つけたい場合です。  例えば下り階段の始まり、ホームの縁などを見つける場合はこの技術を使います。路面の切れ目を確実に発見できるからです。またこの技術を使えば、路面のわずかな境界線を伝って歩くことも可能になります。私が昔関わった方の中に、路面の白線をこの技術で伝うことができる人がいました。それはあたかも職人技のような繊細な白杖さばきでした。こんな白杖の使い方はかなり高度だと思いますが、白杖の石突を変えるだけで路面を滑らすように白杖を振ることができるようになります。その石突とはローラーチップやパームチップと呼ばれるものです。ローラーチップはマシュマロのような形をしていて、杖の軸を中心にクルクル回る構造をしています。パームチップは厚い円盤状の形をしていて、ローラーチップのように回転はしませんが、軸の部分に硬質ゴムが埋め込まれており、円盤の向きが適度に変わるので引っかかることがありません。これらの石突の登場により、最近は常に路面に触れながら歩く人が増えています。 (小林 記) 4ページ目 毎日の生活で見えない、見えにくいことで生じるお困りごとはありませんか? つぶやきコーナー 朝の通勤で新宿駅に到着、一斉に降りた人の波に乗っていつも通り壁伝いに歩いていた時のこと、突然現れた物体に衝突。 実は壁際に大きな空調機が間隔をあけて設置されていたのでした… *ホームの限られた幅、朝のラッシュ、視覚障害者に限らず多くの人がぶつかりそうですね。まわりの人の声掛けはもちろん、車掌さんの到着アナウンスに一声足してもらえると良いのですが。 みなさんだったらどうしますか? 工夫やアイデアがあればお知らせください。 仲間と共有して気付くことがあるかもしれませんね。 (つぶやき*コメントにご協力いただいたみなさま、 ありがとうございました。和田 記) 5-7ページ目 エンジョイ!ブラインド・ロービジョンライフ -訓練卒業生からのメッセージ-  ある日、フライパンを温めて、卵焼きを作ろうとした時、見えていた時と同じように、フライパンにいきなり卵を割って落とした。音がしない、もうひとつ落とした。また音がしない。 不審に思ってガスレンジを触ると、ぬるっとした卵に触ってしまった。私の卵はフライパンの外に落下していたのだ。  掃除が終わって考えた。今日の失敗の原因は何だったんだろう。そうだ、見えている時と同じようにしたのが失敗だったと気付いた。反省をして、今度は、卵をひとつづつボールに割り入れて準備をする。フライパンに油をそっと注ぎ、キッチンペーパーで余分な油を取り除き、熱が伝わったら、ボールの卵をゆっくり注ぐように入れていった。  フライパンに蓋をしてしばらくすると卵の焼ける香りがしてきた。指でそっと白身のところを触って確認する。 丁寧にやさしく作った目玉焼きは大成功。見える人から見たら百点はもらえないかも知れないが。私にはかけがえのない目玉焼きとなった。  考え方を変えるだけで、物事を前向きに組み立てる楽しさに気付き始めた。  「出来ない」から「出来た」までのプロセスを楽しめるようになった事が、それからの私の生き方に拍車が付いたのかもしれない。  誰かの手を借りた方が、簡単で苦労せずに済むかもしれないが、失敗しながら、工夫を重ねていると、ある日、思いがけないヒントが生まれると信じている。  見えている時と見えなくなってからと私には、二つの人生が与えられた。  何か新しい事にチャレンジする時、まず「私に出来るのだろうか」と自問自答を繰り返す習慣があるが、必死になったり、頑張り過ぎたりは徐々に苦しくなるだろう。これから社会に出て仕事をしていかなければいけない若い人とは違うんだから、年齢に合わせて物事を考える方を私は選択する。  訓練という言葉には何か一生懸命取り組まなければいけないと思いがちだが、私は基本的に「楽しむ」をまず第一にする。 そして、指導して下さる方と楽しい時間になるようにと心がける。そして、新しい事に挑戦する時には泣き言を言わない、あきらめずに何度でも教えてもらう。知らない事を教えて下さる方々への感謝が大切だと思っている。  パソコンを習ったことから始まった見えない人生は、小さな自信が次へと目標に挑めるようになるのかも知れない。パソコンが何とか動かせるようになった時、身の回りの整理には点字が有効だと知ったが、とてつもない山登りを初めて、どれだけあきらめかけたことだろう。  毎日5分間でも点字に触ることが守れなくて、同じ教室の人に徐々に遅れを取っていた時、練習方法を変えてみようと思った。  「朝練」である。4時に目覚ましをかけて、早朝で頭が疲れていない時間に点字を触って練習してみると、効率が良かった。  今でも点字の学習をした事は私の誇りになっている。 中途障碍者には、点字は苦しいと思われているが、点字の成り立ちを理解すると、手の届かない程、難しい物ではないと思う。  一歩一歩その歩みは小さくても、年を重ねるごとに自分に力が付いて、見えないから出来ないのではなく、やらないから出来ないと思えるようになると思う。  失敗程、自分を成長させてくれるものはないと信じる。  工夫すること、絶えず考える姿勢を保つことは、自分の一番の生活訓練となっている。 卒業生:田村様 8-9ページ目 最近流行りの機器&アプリよもやま話 -iPhoneトラブル対応のコツ- iPhoneを使っていると誰しも一度や二度は「iPhoneがしゃべらなくなった!」「画面が真っ暗で見えない!」などのトラブルに遭遇することがあると思います。今回はよく起こるトラブルとその対応のコツを説明します。 1. iPhoneのボイスオーバーが画面を読み上げなくなった パターン1:画面に触れたときにカチッカチッと音がなる場合 対応:3本指で2回タップして読み上げオンにするか、一度iPhoneの電源を切って入れ直すと画面読み上げが復活する。 パターン2:画面に触れたときに音が何もならないが指先に振動を感じる場合 対応:ボイスオーバーはオンになっているのでボリュームを上げてみる。 パターン3:ボリュームを上げても画面に触れたときに音も振動もない場合 対応:ボイスオーバーがオフになっている、または電源が切れている可能性があるので、Siriを起動して「ボイスオーバー オン」と指示するか、充電をした状態で電源を入れる。 2. iPhoneの画面がホームボタンや電源ボタンを押しても暗くて何も見えない パターン1:画面に触れた際にボイスオーバーが読み上げる場合 対応:スクリーンカーテンがオンになっているので、3本指3回タップしスクリーンカーテンをオフにする。 パターン2:画面に触れた際ボイスオーバーの反応がない場合 対応:電源がオフになっている可能性があるので電源を入れる。充電しても電源が入らない場合はショップに相談。 3. iPhoneそのものや特定のアプリがなぜかうまく動かない、ある時期を境に読み上げなくなった 対応:まずアップスイッチャーを開き(ホームボタン素早く2回)、左右スワイプで不具合のあるアプリに移動し3本指上スワイプでアプリを終了する。その後アプリを再度起動し不具合が直ったか確認。 直らない場合は、iPhoneを再起動するかiOSやアプリのアップデート(更新)があれば実施し、それでも直らない場合はiPhoneまたはアプリそのものの不具合の可能性もあるので次のアップデートで改善されるのを待つ。 iPhone自体が動かなくなり電源が切れない場合は、機種によって強制再起動の方法は変わるがSEシリーズなら「ボリュームアップ→ボリュームダウン→電源入るまでボタン長押し(20秒くらい)」を素早く行う。 最後に、トラブルが起きた時は、最初にiPhoneを再起動してみましょう。何もなかったように解決するときがあります。自力での解決が難しい場合はアップルのサポート窓口に電話するかアップルストアに持っていくことをおすすめします。 (清水 記) 終わり