日点自立支援室ニュースレター Vol.11 2023年夏号 ごあいさつ 梅雨が明ける前後から、うだるような暑さが続いていますが皆さん元気でお過ごしでしょうか?もうすぐお盆ですが、お盆の由来と成り立ちは仏教における「盂蘭盆会(うらぼんえ)」を略した言葉とされています。語源はサンスクリット語の「ウランバーナ(逆さに吊り下げられた苦しみ)」だそうです。 お釈迦様のお弟子である目連尊者(もくれんそんじゃ)が、餓鬼道に落ち逆さ吊りにされ苦しむ母を救う方法をお釈迦様に相談したところ、「夏の修行を終えた7月15日(旧暦)に僧侶たちを招き、供物をささげて供養するとよい」という教えを受けそれに従って供養したところ、母親は極楽往生を遂げたと言われています。 今はお盆提灯や牛馬のかざりをする家は少なくなっていますが、お墓参りには行くというかたは多いのではないでしょうか。また、昔から「お盆をすぎると涼しくなる」と言われていましたが、近年はお盆を過ぎても、下手をすると9月も猛暑が続いたりするので大変ですよね。皆さんも体調には気を付けてこの暑い夏をなんとか乗り切りましょう。さて、今回のニュースレターでも様々なお役立ち情報を紹介します。どうぞお楽しみください。 (島田記) 歩行訓練のすすめ④ -30cm幅の一本橋から落ちないように歩くには?- 身長170cm、視力光覚弁の人が30cm幅の一本橋から落ちないように歩くことを想像してみましょう。その時の条件は以下の3つとします。 ①道具を何も使わない。②長さ90cmの杖を使う。③長さ130cmの杖を使う。さて、どの条件が一番効率良く歩けると思いますか? 答えを出す前に、晴眼者が同じ橋の上を歩くことを考えてみましょう。晴眼者であれば橋から落ちることは想像できないのではないでしょうか?どうして晴眼者は落ちないのでしょうか? 答えは、視覚情報で橋の延びている方向が確認できるからです。そこで話を戻しましょう。視覚障害の人が橋から落ちてしまうのは、橋が延びている方向が分からないからです。 それでは上記の3つの条件の中で、橋の延びている方向がもっとも確認しやすいのはどれでしょうか?もう分かりますよね?答えは③の「長さ130cmの杖を使う」です。短い杖よりも長い杖を使った方が、より遠方まで橋が延びている方向を確認することができるようになるからです。さて、ここまで幅30cmの橋の上を歩くという非現実的な話をしてきました。 実はこれは、視覚障害者誘導用ブロック(以下、点字ブロックと言います)の上を歩くことに当てはめることができます。点字ブロックに沿って効率的に歩くためには、足底の感覚だけで歩くのではなく、身長や歩幅に合った長さの白杖を使うことで曲がらずに、効率的に歩くことが可能になります。恐らく体験的にこのことを知っている方々がいらっしゃることでしょう。 ある方々は、前方に伸ばした白杖の石突を線状ブロックの間に軽く押し当てながら、前方へ押し出すように歩いていらっしゃいます。路面電車のようなイメージです。これはとても効率的ではありますが、信号機のない、単線の線路の上を無防備に移動するようなもので、前方から同様の方法で移動してくる人がいるかもしれないですし、点字ブロックの上に大きな障害物があるかも知れません。 白杖技術を学び、きちんとした技術で点字ブロックを伝えば、点字ブロックを踏むことなく、点字ブロックと平行に効率よく移動することが可能になります。点字ブロックを上手に伝うためには、石突を路面から持ち上げることなく路面上を滑らせるように白杖を振る方法や、点字ブロック側へ振る時にだけ石突を持ち上げずに滑らせる方法を使います。そして、白杖を振るリズムと足を進めるリズムが絶えず2拍子になるよう維持します。これが上手に無意識にできるようになれば、点字ブロックや点字ブロック以外のものも上手に伝うことができるようになり、身体を障害物にぶつけることが著しく少なくなるでしょう。 さらに、周囲の音に気を配れるようになれば、正面から来る人との衝突も避けることができるようになるでしょう。歩行訓練を受けて、そんな歩き方を目指してみませんか? (小林記) エンジョイ!ブラインド・ロービジョンライフ -コップに飲み物を注ぐあれこれ- みなさまこんにちは!今回からは新しい試みとして、自立支援室の視覚障害があるスタッフ3人が、日常生活での困りごとや工夫などを話し合った内容をお届けします。 暑い夏は水分補給の機会も多くなります。そこで今回は、コップに飲み物を注ぐときについてあれこれ話し合ってみました。 池松: まず、コップに冷たい飲み物を注ぐときにはどんな工夫をしていますか? 菊池: 私は飲み物をコップの外にこぼしてしまわないよう、飲み物が入った容器の注ぎ口の近くあたりをコップのふちに当てて注ぐようにしています。こうすると外には漏れにくくなりますね。 松谷: 私は、どれだけの量がコップに入ったかがわかるように重さを意識しています。空のコップの重さを確かめた後に注いでいくと、少しずつコップが重くなっていくので、ちょうどいい辺りで止めるとこぼれにくいですね。 池松: 私もお二人と同じくこぼれないように注意しているのですが、なかなかどこまで注いだかがわかりづらい時には、自分だけが飲むものであれば一瞬指をコップの中に入れて、触って量を確かめる時もありますね。 松谷: 確かに自分だけが飲むものであれば、指で触る方法もありですね。 お二人は、コップに注ぐとき、注ぎ先のコップは手に持っていますか?それとも台の上に置いていますか? 菊池: 私は片手にコップを持って、注ぎながら重さを確認しています。 池松: 私も、台の上にコップを置くと、注ぐとき容器の注ぎ口がコップに触れて倒してしまうのが不安なので、できるだけ手でもって注ぐようにしています。 松谷: そうなんですね!私は、空中でコップを持って注ぐのはこぼしてしまいそうなので、コップは台の上に置いて、こまめに持ち上げて重さを確認しながら注いでいます。それから、ある程度慣れたコップであれば、注いでいる時間(秒数)をなんとなく覚えておけば、それほどこまめに重さを確認しなくても一定の量にすることもできますね。 池松: 慣れたコップであれば、音も手掛かりにすることがありますね。ガラスなどのコップの場合、爪の先あたりで軽くたたくと乾いた音がしますが、注いでいくとこの音が少しずつ低くなっていくので、これが手掛かりになることもあります。 菊池: なるほど、コップ一つとってもいろいろな工夫がありますね。ただ、やかんなど注ぎ口の大きな容器だと、思いがけずたくさんの量が注がれてこぼしてしまうことがあります。 松谷: 確かに。どんな容器から注ぐかによっても注ぎやすさは変わってきそうですね。 熱い飲み物の場合はどうですか? 池松: 熱いものの場合は指で確認するのが難しいこともあるので、コップの重さやポットから注ぐときには、ポンプを押した回数・給湯ボタンを押している長さなどを手掛かりにすることが多いですね。 松谷: ポットはいろいろな形のものがありますが、注ぎ口が高いところにある場合、コップを台の上に置いて注ごうとするとこぼれてしまいやすく苦労します。 菊池: そうですね。なので私は、できるだけ給湯口が下側まで伸びているものを探して使うようにしています。 池松: 私は、ポットではなく小型の電気ケトルを使っています。ポットと違って保温などの機能はありませんが、やかんのように持ち上げてコップの近くで注ぐこともできますし、コップ1杯分の量から沸かせるものもあるので、こぼさない程度の少ない量だけしか沸かさないこともあります。 【終わりに】 普段日常的に行っている飲み物を注ぐ動作にも、人それぞれいろいろな工夫や道具がありました。他にもいろいろな工夫などがあるかと思いますので、ご自身にあった方法を探してみるのも良いかもしれません。 (池松・菊池・松谷記) 「受給者証」はお手元にありますか。 「受給者証」とは? 障害者手帳とは別のもので、障害者総合支援法に含まれるサービスのうち、ご自身が利用する障害福祉サービスの内容を記しているものです。 形は、お薬手帳のような冊子だったり、A3サイズを折りたたんだサイズだったり、別冊がついていたりと自治体によって様々です。 自立支援室利用の皆様には、「受給者証」を必ずお持ちのはずで、契約時に提示いただきました。 「受給者証」には何が書いてあるのでしょう? ●各個人に対する受給者証番号、お名前、住所、生年月日、交付日、市町村名 ●利用しているサービスの種類、支給量、支給決定期間。 たとえば、自立支援室のご利用者様は ①日本点字図書館が提供するサービスである「自立訓練(生活訓練)視覚障害」 ②1か月内の訓練利用の日数。(例)「月5日」や「原則の日数―8日」など ③支給決定期間「令和5年〇月〇日から令和6年〇月〇日」 この①②③は必ず書かれています。 ●計画相談を利用されている方は、相談支援専門員が所属する事業所名、モニタリング期間 計画相談を利用されていない方は、「セルフプラン」と記載されていることが多いです。 ●本人負担金額とその金額の適用期間 各自の「受給者証」に記されているサービスを利用した場合、ひと月に利用した量に関わらず、上限額以上の負担は生じません。所得に応じて0円、9300円、37200円の設定があります。 ここで、費用負担ある方の場合で、複数の事業所をご利用されていると、「該当」と記載されている場合があります。これは、本人負担額が上限金額を超えないように事業所間で調整をする必要がある、ということを意味します。 ●契約した事業所の記載欄事業所名、サービス名、契約日、支給量、契約時に、「日本点字図書館自立支援室」と押印しております。 以上が主な記載内容です。ご不明な点は、加藤までお尋ねください。 最後に、「受給者証」のサービスを継続希望するならば更新手続きが必要です。時期は、お誕生月に更新手続きをする自治体が多いです。 但し、日本点字図書館で提供している自立訓練は有限なので、ご自身にとって訓練目標が達成できているのか、新たな訓練希望があるか、さらには訓練修了後の生活のイメージなどなど、ご本人の意向を伺いながら適切な訓練が提供できるように進めたいと考えております。 「受給者証」の自立訓練の支給期間の終わりが近づいてきたら加藤よりお声かけいたしますので、よろしくお願いいたします。 (加藤記) スマホ操作のき・ほ・ん No.1 -スマホの画面を効率的に探ろう- スマホを音声読み上げ機能を使って操作する際に難しく感じる原因として、画面がツルツルな点も大きいのですが、画面の状況がパッとわからず迷子になりやすいという点も大きいです。ボタンや広告がたくさんあって一番大事な本文にたどり着くまでに一苦労、途中で読むのをやめた・・・なんて経験がある方や、画面さえ見えれば、パッ!とボタンを押せたり、ひと目で関係ない画面だとわかるのに・・・時間がかかってストレスたまるなぁという悩みを抱える方も多いと思います。 スマホ操作中に効率よく、迷子にならないように操作するために、以下のポイントを押さえると良いです。今回はiPhoneを想定して説明しますがアンドロイドスマホでも活用できます。 ポイント1:画面を探る時や迷子になった時は、画面の最上部(ステータスバーの下)と最下部(ホームボタンのすぐ上、ホーム画面のドックの位置)のボタンをまず確認する。 ◆画面の最上部または最下部には、「戻る」「完了」「キャンセル(中止)」「設定」「編集」「ヘルプ」などのボタンが配置される。 ◆アプリによっては画面の最下部に、アプリ内の画面(機能)を切り替えるボタンが配置される。例えば、電話アプリは最下部に「よく使う項目」「履歴」「連絡先」 「キーパッド」「留守番電話」とボタンが並んでいるので切り替えには最下部を探るのがポイントです。 画面のあちこちにボタンが散らばっていたら見えていても操作しづらいですよね。そのため、よく使うボタンは最上部または最下部にまとまっています。 ポイント2:指を素早く最上部、最下部に持っていけるよう以下の方法を習得する (方法1)ホームボタンや上部にあるスピーカー部分など指の触覚でわかりやすい位置から指を動かす。凸点シールなどを活用するのもあり。 (方法2)iPhoneの場合は、画面の上半分上で4本指1回タップするとページの先頭、逆に下半分で4本指1回タップするとページの最後にカーソルが飛ぶことを利用する。 この方法でカーソルを最後に飛ばすと長文で全て読むのに時間がかかる同意書の最後に表示された「同意する」ボタンなどに素早く飛べます。 ポイント3:ウェブページの閲覧時は見出しごとの移動を活用する (方法)2本指を画面につけてネジを回すような動かし(ローター操作)、見出しと読み上げたら指を画面から離し、下スワイプすると見出しごとに移動できます。見出しを読んでから細かい本文に移動することで、まるで本の目次を読んで概要を把握してから好きな部分だけ読むような感覚でウェブ閲覧もできるようになります。 清水記 -本文終わり-