日点自立支援室ニュースレター Vol.12 2023年秋号 1ページ目 ごあいさつ  暑すぎる夏が続き、過ごしやすい秋が来るかと思いきや、いきなり寒くなったり、また暑さがぶり返したりと「季節飛ばし」のような気候が続きますね。皆さん元気でお過ごしでしょうか?  10月も終わり、日没はすっかり早くなりました。 「秋の日はつるべ落とし」ということわざがありますが、つるべとは、井戸で水を汲み上げるために使われる道具のことで、桶を縄の先にとりつけたものを滑車に掛けて使用します。お使いになったことのあるかたもいるかもしれません。このつるべが、井戸の中に素早く落ちる様子を秋の日暮れに例えています。  日没が早くなっていくのは少し寂しい感じもしますが、その分、夜が長くなります。「秋の夜長」という言葉がありますが、リラックスして読書を楽しんだりするにはもってこいですね。最近はスマホのアプリを使って手軽に録音図書を楽しむことも出来ます。まだ体験したことが無いかたは、是非スタッフまでお伝えください。  今回のニュースレターでも様々なお役立ち情報を紹介します。どうぞお楽しみください。 (島田 記) 2-3ページ目 お役所の流儀 ~同行援護の取り扱いを事例として~ 先日、あるメーリングリスト(以下MLといいます)に「同行援護は身体障害者手帳がなくても受けることができる」という情報が流れました。その情報によると、「同行援護はアセスメント表の評価に基づいて支給決定されるから、身体障害者手帳の取得は前提にならない」ということでした。 「同行援護」はいわゆる障害者総合支援法に定められた障害福祉サービスの介護給付として給付されるものです。その条文の中に 『第四条 この法律において「障害者」とは、身体障害者福祉法第四条に規定する身体障害者、知的障害者福祉法にいう知的障害者のうち十八歳以上である者及び精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第五条第一項に規定する精神障害者・・・(中略)・・・のうち十八歳以上である者並びに治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病であって政令で定めるものによる障害の程度が主務大臣が定める程度である者であって十八歳以上であるものをいう。』 と記されています。つまり障害者総合支援法の障害福祉サービスの対象となるのは、身体障害者手帳を持つ人、指定難病等を持つ18歳以上の人と規定されています。同行援護の給付の必要性はアセスメント表による評価結果によって決定されるとありますが、アセスメントを受けられる人は、同行援護が障害者総合支援法のサービスである以上、障害者又は難病等の指定を受けた人と考えるのが常識です。  日本視覚障害者連合(以下、日視連といいます)の厚生労働省(以下、厚労省といいます)に対する陳情の際に、障害福祉課の担当官が「同行援護はアセスメント表に基づき給付を決定するので、身体障害者手帳の所持を給付の要件とはしていない」と回答したという資料がMLに上げられていました。さて、この発言を水戸黄門の印籠のように使い、障害者手帳が取れず難病指定も受けられないが外出に困っている人がもれなく同行援護の申請ができるか?ということですが、一般的なお役所の流儀では答えは「NO」です。 その理由は、①同行援護給付の根拠法令は障害者総合支援法であり、給付対象は障害者手帳を持つか難病等の指定を受けている人と定められていること。②仮に厚労省が陳情で「使える」と回答したところで、その内容について通知等で全国の自治体に周知されていないこと。③同行援護の給付決定は各自治体が権限を所有していること。日視連の陳情の際に厚労省のお役人が何と答えようが、「そんなの関係ねぇ!」なんです。私自身、国家公務員として33年間の勤務歴がありますが(純粋な事務職ではありませんが)、役人は前例のないこと、根拠になる法令や規則にないことはやりません。逆に言えば、根拠になる規則や法令に定められていることに合致すると判断できることはできることになります。つまり、記述されていること、文言の解釈として成り立つかどうかということを注意深く観察、考察することが重要なのです。例えば最近の事例をご紹介いたしましょう。 ある文京区の方が、文字を読むことが大変になったので、音声で活字を読み上げてくれる機器が欲しいとご相談に来られました。文字を拡大する道具としては拡大読書器が有名だと思いますが、最近は活字そのものをカメラで撮影してデジタル処理をした後に音声で読み上げてくれる機能を持った拡大読書器が販売されています。また、音声読み上げの機能の使い勝手を向上させ、その機能に特化した製品も出ていますが、拡大表示の機能が備わっていません。  日常生活用具の申請枠が「拡大読書器」と記されていれば、拡大機能のないものは対象外と思ってしまいますよね?ところが、文京区の規定を良く見ると、「視覚障害者用拡大読書器:書籍等の活字文書を読み取り、拡大された画像(文字等)をモニターに写しだせるもの、又は読み取った内容を音声式信号に変換して出力する機能を有するもの」と記されており、拡大出力の機能を必ずしも備えている必要がないという解釈が可能です。当初、窓口の係官は「音声出力のみの機器は非該当」と言っていたのですが、この文面を示して確認したところ、音声読書器の申請が認められました。このように根拠になるものの有無が役人にとってはとっても重要だということを心にとめていただけると良いと思います。 (小林 記) 4-7ページ目 エンジョイ!ブラインド・ロービジョンライフ -液体を計るあれこれ- 前回はコップに飲み物を注ぐ際の工夫について話し合いましたが、今回はもう少し踏み込んで、注ぐ量が決まっている調味料や洗剤などについて取り上げます。 池松: 注ぐ量が決まっているものの代表格は、やはり料理をする際の調味料かなと思いますが、お二人は普段どのような工夫をされていますか? 松谷: 私は、注ぐものの量に合わせて、いろいろな道具を使って計っています。当館の用具ショップでも、蓋の上をプッシュすると一定の量が出る醤油さしや計量ボトル・カップなどがいろいろと販売されており、こういうものも使っていますが、それ以外にも例えば薬用養命酒についているカップは30CCを計ることができるんですよ。また、少ない量であればうがい薬のキャップを使ったり、量が多いものはお酒のぐい飲みも使えますね。 菊池: 確かにものの量に合わせて道具を用意しておくと便利ですね。私は慣れた料理であれば、あまり細かく計量せずに目分量で作ってしまうこともあります。 松谷: そうなんですね!失敗してしまうことはないですか? 菊池: 時々失敗することはありますが、よく使う調味料であれば、容器をどれぐらい傾けるとどの程度出るかのイメージがあるのでそれなりにうまくできることが多いです。 松谷: なるほど。私は調味料が出ている様子を目で見た経験がないので、どれぐらい注がれているかのイメージがしづらいのですが、もしかすると見て料理をした経験の有無も影響するのかもしれませんね。 菊池: 確かに、私は見ながら料理をしていた時期もあるので、その時の感覚があるのかもしれません。 池松: 私は見ながら料理をした経験はないのですが、計量が面倒で目分量で作ってみたところ、思った以上に調味料が入ってしまい大失敗した経験がありました(汗)やはり目分量には経験も大事ですね。 菊池: 調味料とは少し違いますが、カップ麺を作る時のお湯の量を確認するのに毎回苦労していて、お二人は何か工夫はありますか? 松谷: カップによっては、内側にお湯の量を示す線のようなくぼみがつけられているものがあります。、それであれば、一瞬指を入れて触れて確認することもできますが、やけどする可能性もありますし難しいですね。 池松: これは知人から聞いたのですが、使い慣れた蓋つきの耐熱容器にカップの中身を移し替えて、そちらにお湯を注いで作るという方法もあるようです。よく使う食器であれば、どれぐらい注ぐとちょうどいいのかがわかるのでカップよりも作りやすいとのことでした。ただ、食器によっては温度が保てずうまく作れない場合もあるようです。 松谷: カップではありませんが、固形の卵スープのようなものであれば、はしで溶け具合を確認したり、味を見たりしながらちょうどいいお湯の量を見つけることができます。 菊池: なるほど。使い慣れた食器を使えば、何度か作ればある程度適量の感覚もつかめそうですね。 池松: 私はお酒が好きなのですが、水割りを作ろうとするとついついお酒を多く注いでしまうのが悩みです。 菊池: 最近、計量リキュールボトルという商品を見つけたのですが、こちらは瓶の注ぎ口に取り付けて注ぐと、一定量が出て止まるというものです。これを使うと注ぎすぎは防げますよ。 池松: なるほど!ぜひ使いたいと思います(笑) 松谷: 続いて、液体の洗濯洗剤も細かく量を計る必要がありますが、そちらについてはいかがでしょうか? 菊池: 最近は、キャップ部分のポンプを押すと決まった量が出るボトルの液体洗剤が市販されていて、そちらは便利ですね。私が教えてもらって使っているのはアタック0という製品ですが、他にもあるかもしれません。 松谷: そういったボトルがあれば、使い終わった後も詰め替えたりして長く便利に使えそうですね。 菊池: そうですね。他にも、100円均一で売られているポンプ式の空ボトルなども、多少むらはありますがある程度決まった量が出ると思います。洗濯槽にうまく入れるには少し角度の工夫が必要かもしれませんが。 池松: なるほど。私はこれまで液体洗剤を計るのが苦手だったので、ジェルボールタイプのものを使っていたのですが、便利な形のボトルも試してみようかなと思います。 【終わりに】 今回ご紹介した工夫や道具以外にも、いろいろな方法があると思います。特に最近では、ホームセンターや100円均一にもあれこれとアイディア商品がありますので、使いやすいものを探してみるのも楽しいかもしれませんね。 8-10ページ目 レクリエーション報告 「ちょっとしたこと、でも大事なこと、銀行の通帳残高確認、どうしていますか」 9月は、30日の土曜日に、訓練として希望するほどでもないけれど、自分以外の視覚障害者がどうしているのかを聞いてみたいこと、今回は通帳残高をテーマに取り上げました。 〇参加されたみなさまの残高確認の方法とは? ・15時までに銀行の窓口に行って教えてもらう ・家族に任せているので自分では残高を確認していない ・ATMの音声ガイド受話器を利用している ・事前に登録が必要であったが、電話で確認できている(三井住友銀行テレホンバンキング) ・銀行とは顔なじみで代筆も依頼できるので困っていない ・利用するATMの支店、さらにATM機械の場所を決めて利用している ・面倒だから通帳の記帳はしていない ・一人で白杖を使って銀行に行くので、受付の人が声をかけてくれる際に、小さな声で教えてもらう。 ・ガイドヘルパーには頼みにくいので、親族に教えてもらっている ・窓口で通帳内容を尋ねたいが、混んでいるので躊躇してしまう ・銀行の人に教えてもらいたい時は、空いている時間帯を選んでいる ・ATM画面、拡大文字表示ができるので活用して操作している ・拡大読書器で確認している ・ゆうちょ銀行のATMの文字は太字なので見やすい ・ペイペイ銀行、ボイスオーバーで確認できる 銀行によって、さらには窓口によって、時によって対応いろいろあるようです。 ?後半はグループ別にディスカッションの時間を設けました。各自、わたしにとっての困りごとに対し、グループ内でさまざまな工夫や対応策が提案されました。 Q 診察券やスイカ、ナナコなど、どのように区別していますか? A 財布のしまう場所を決めている、シールを貼って区別している、点字でラベルをつけている、カードばかりしまうカード入れを使って仕分けしている、紙の診察券は病院に確認した上で、切り込みを入れて判別できるようにした Q 電子マネーの残高を知りたい A 「残高確認」というアプリならば、様々なカードの残高がわかるので便利 Q じゃがいもの皮むきの良い方法を知りたい A ピーラーを使う、ゆでるか蒸すなど加熱すると皮は向きやすくなる、100均の温野菜ができる容器も野菜によっては便利に使っている Q アイロンのコツは? A ハンガーのまま蒸気でしわとりができるスチームアイロンが便利、アイロン不要の洋服を選ぶ Q 副音声はどのテレビにもついているのか A リモコンの音声ボタンで切り替えできる、最近は副音声つきの番組も増えた このほか ・ラジオを聴くようになって、情報の幅が広がった ・洋服は、店を決めて購入するようにしている。お店の人も自分の好みをわかってくれる上に毎回丁寧に説明してくれる ・スーパーでは、店員とお金のやり取りができるレジに並ぶ ・コンビニもセルフレジになったが、白杖を持っていると親切に操作してくれる ・スイカのチャージは、券売機の音声ガイドが便利 今回の参加者13名のうち、初めての方は6名でした。普段曜日が異なると接点がない方同士ですが、気軽におしゃべりできる楽しい機会となりました。 11ページ目 毎日の生活で見えない、見えにくいことで生じる お困りごと つぶやきコーナー -横断歩道でのできごと- その1 右側の車が止まっている。よし渡ろう!あ、点滅している。が、渡り始めてしまった。後ろから「赤ですよ-」と言われた。引き返すのも怖くて進んでしまった… その2 左側の車が止まっている。よし渡ろう!あ、点滅している。が、渡り始めてしまった。前方から右折してきた車のドライバーに怒鳴られた。車の信号は右折OK矢印だったらしい。 交差点要注意!!信号アプリ「OKO」など導入してみようかな。 *交差点は緊張する場所ですね。信号が切り替わるタイミングの判断、歩行者用押しボタンを探すのも難しい時がありますね。 横断歩道にエスコートゾーン(ガイド)がついている場所もまだまだ少ない現状です。 便利な道具と自分の感覚、適切な声掛けとサポート、安全第一で渡りたいものです。 みなさんだったらどうしますか? 工夫やアイデアがあればお知らせください。 仲間と共有して気付くことがあるかもしれませんね。 つぶやき*コメントにご協力いただいたみなさま、ありがとうございました。 (和田 記) 12-14ページ目 スマホ操作のき・ほ・ん No.2 -スワイプとダブルタップの精度をあげよう-  前回は、スマホ操作中にどこを読んでいるのかわからなくなったら画面の最上部や最下部などわかりやすい位置にカーソルを移動してから再度読み直すのがコツとお伝えしました。   画面上で右往左往しないためには、画面を順番に読ませるスワイプと、決定するダブルタップ、この2つの基本ジェスチャーが、画面に触れる(タッチ)操作として認識されないようにできるコツをつかむことがポイントです。  スワイプがタッチになると指が触れた部分にカーソル(読み上げ部分)が移動するため、触れた場所によっては、一度読んだ場所に戻ってしまったり、大事な部分を読み飛ばしてしまう可能性もあります。  全文読み上げだと不要な部分も全部読むため、確実にスワイプができると効率よく必要な情報にたどり着くことができます。   スワイプのポイントは以下の通りです。 1:スワイプする指は画面から一定距離の高さ(画面から2,3cm以内が理想)かつ画面から外れすぎない位置で構える 2:指は画面にビトっとつけずに埃を払うようにしっかり「ピッ!」と払う。飛行機が超低空飛行で着陸して一瞬で離陸するようなイメージで。 3:スワイプの向きが斜めになり左右スワイプが上下スワイプ(またはその逆)と認識されないように注意する 4:スワイプする指以外の部分やスマホを持つ手が画面に触れないように注意する ここで皆さんに質問です。 視覚障害の方がキャッチボールする際に、自分めがけてまっすぐに宙を飛んできたボールと地面を転がってきたボール、どちらが捕りやすいでしょうか? 腰が痛い、膝が痛いなど特別な事情がなければ、大体の方が地面を転がってきたボールの方が捕りやすいのではと思います。それは手を地面に持っていく方が、どの高さに手を持っていくか不確定な空中に持っていくよりも易しいからです。 つまり、スワイプの精度を上げる方法の一つは、指を画面との距離感が安定しない空中から動かし始めるのではなく、画面の縁や側面(触れても反応しない)やスマホを握っている手に触れてからスワイプをすることです。そうすることで、不用意に画面に触れてしまったりせず、一定の高さから、大きく斜めったりせずにスワイプしやすくなります。 また、もう一つの方法として、両手で水をすくうように、スマホを親指以外で包み込むような感じで持つと親指がスマホの左右の縁の近くで自由に動く状態になるので、その親指でスワイプをする方法もあります。昔ゲームボーイというゲーム機がありましたがその持ち方と同じです(世代によってはわからないかもですが)。この方法でも親指と画面との距離は一定に保たれるので正しくスワイプしやすくなります。 また、この両手持ちに慣れるとスプリットタップやフリック入力が早くなり、若い方々と同じように爆速で文字入力ができるようになるかもしれません。 最後に、ダブルタップも上記のスワイプのコツと同じで指を縁などに触れてから、【トン・・・トン】でも【ドン!ドン!】でもなく、【ト・トン!】という早いタイミングで画面に優しく行うことがコツです。指の力を抜いて【ト・トン!】とタップとタップの間隔をなるべく短くするにはスワイプと同じ指を画面から離しすぎないのもポイントです。強くタップすると指が上下に滑ってスワイプと認識されやすくなるので優しさもポイントです。 どうしてもダブルタップを素早くするのが難しい場合はダブルタップとして認識されるためのタップとタップの間隔の時間を長くすることも可能です。 詳しい方法については支援員に遠慮なくお尋ね下さい。 「スワイプを制するものはスマホを制す」(「リバウンドを制するものはバスケを制す」という某バスケアニメのセリフみたい)まではいかないまでも、皆さん、自分がやりやすいと思うスワイプとダブルタップのコツをつかんで、「スワイプ スワイプ るんるんるん♪」と歌いながら操作できるぐらい練習しましょう。 (清水 記) 以上です。