日点自立支援室ニュースレター Vol.15 2024年夏号 目次 ごあいさつ・・・2 新しい自走型移動支援装置グライド(Glide) 情報提供・・・4 エンジョイ!ブラインド・ロービジョンライフ・・・7 つぶやきコーナー・・・12 スマホ操作のき・ほ・ん・・・16 ごあいさつ  4月より課長に就任いたしました市川弘美です。 あっという間に3ヶ月が過ぎ、ようやく皆さんのお名前とお顔が一致するようになりました。  遅ればせながら、自己紹介をいたします。  私は横浜市出身で50才、家族は中途失明で全盲の夫と大学生の息子です。  趣味は、散歩しながら植物を観察すること、美味しいものを食べること・作ることです。最近は、歴史的建造物に興味があり、実際に足を運んだり、テレビや書籍で知識を深め楽しんでいます。  点字との最初の出会いは中学時代の委員会活動、視覚障害の方との最初の接点は高校時代のアルバイト先でした。網膜色素変性症という病名を知ったのも、この方との出会いがきっかけでした。  大学入学後、点字や視覚障害について真剣に向き合いたいと思い、点訳部に入りました。学外にも多くの視覚障害の友人ができ、友人からの情報提供により、当館に就職することができました。  当館での勤務年数は26年になり、図書の製作、貸出、レファレンス、用具の部署を経験しました。  相談や訓練の仕事は以前から興味がありましたので、機会をいただけたことを嬉しく思っております。少しずつ訓練を担当できるようになり、ある職員が「訓練生の方達から元気をいただける」と言っていた通り、私も皆さんから元気をいただいております。  自立支援室は、立ち上げから7年を経過しようとしています。これからも当館の重要な一事業として継続・発展させていくために、皆さんの声を大切にしながら、職員一同精進してまいります。  どうぞよろしくお願いいたします。 新しい自走型移動支援装置グライド(Glide) 情報提供  盲導犬ロボットの開発は日本で半世紀も前から行われて来ましたが、いまだに実用化にはいったっていません。近年に至り、日本科学未来館の館長でIBMフェローでもある浅川智恵子さんのアイデアが発端になり、AIスーツケースの開発がはじまり、現在日本科学未来館で定常的な試験運用が行われています。これはスーツケースの形状をした自走式の移動支援ロボットです。この装置は現段階では学習済みの環境でのみ使用が可能なものです。  今日私がご紹介するのは、米国シアトルにあるグライダンス社(Glidance Inc.)が開発を進めているグライド(Glide)と名付けられた自走式の移動支援ロボットです。グライドは大きさ20cmの角丸状の形をしており、直径17.5cmの2個の車輪と前面にバンパーがついており、さらに操作するための伸縮式の長いハンドルがついています。重さは2.75kgと軽量です。前面のバンパーはスタンドの働きもしてくれて、立ち止まっているときには垂直に立てることができます。  グライドは最新のナビゲーション機器やアプリと同様に、指定した目的地へ最適なルートを選択しながら誘導してくれる機能の他に、ナビ機能を使用しないフリースタイルモードがあり、このモードで歩くと交差点を発見して停止する、地上だけでなく空間の障害物を回避する、登録されたものの存在を知らせるなどの機能が働きます。階段、エレベーター、ドアなどに接近すると自動的にブレーキがかかり、音声と振動で案内が流れます。 上り階段は本体を持ちあげて上りますが、降り階段は大きな車輪を利用してそのまま降りることも可能です。1回のフル充電で6時間の使用が可能です。白杖で前方を探るのと同様に、本体が自身の前方を移動しますので、白杖を使用せず、グライドのみでの外出が可能です。  本体の設定等を行うためにはスマホが必要です。iPhone、アンドロイド両者に対応しています。本体価格は1499米ドル(約24万円)で、その他ひと月30米ドル(約4800円)のサブスクリプションが必要です。販売は当面アメリカ、カナダ、イギリス、EU加盟国で2025年9月から予定されています。遠くない将来、日本での利用も可能になるのではないでしょうか。  詳しい情報をお知りになりたい方は、以下のURLをご参照ください。  https://glidance.io/ (小林 記) エンジョイ!ブラインド・ロービジョンライフ -お出かけあれこれ- 今回は、外出をテーマに普段どんな場所へ出かけるかや、外出の際の困りごとなどについて話し合いました。 池松: 菊池さん、松谷さんは普段お一人で出かける際にはどんな場所に行くことが多いですか? 菊池: 私は、職場以外だと買い物や、慣れた場所であれば病院などですね。 松谷: 私もほとんど同じです。 池松: 私は外でお酒を飲んだりおいしいものを食べることが好きなので、近所にある評判の良いお店をインターネットで調べたり、知り合いから教えてもらったりして行ってみることがあります。 松谷: 初めて行く場所への行き方はどうやって調べていますか? 池松: あらかじめ電話で問い合わせて、駅など自分がわかる場所からの道順を聞いてみたり、時々はスマホのアプリを使って調べたりすることもあります。ただ、それでも道順がわからなかったり、目的の場所の近くに来ても入り口のドアの位置がわからず困ったりすることもあるので、最終的には周囲の人に道を尋ねながら向かう場合が多いです。なかなかうまくたどり着かないこともありますが… 松谷: ちょっとした冒険ですね。 池松: その分きちんとたどり着けたときはとても達成感があります(笑) 菊池: 私は、初めて行く場所は同行援護(ガイドヘルパー)サービスを利用することがほとんどです。 松谷: 私も慣れない場所へ行くときは積極的に同行援護サービスを利用するようにしています。特にこれから何度か通う必要がある場所だと、最初に行った際、ヘルパーさんに道すがら周囲にどういったものがあるかを聞いておくと、次回一人で行った時にも道順をイメージしやすいですね。 菊池: 家の近所などでも、ヘルパーさんに周囲の状況を知らせてもらいながら歩くと「こんなお店あったんだ!」 というような新しい発見があったりします。 また、「こんなお花が咲いてますよ」といったことを教えてくれる方もいらっしゃるので、話題の材料になることもありますね。 松谷: 買い物についても、一人で行く場合もあるのですが同行援護サービスを使うこともあります。この店のこの商品が欲しいというのが決まっている場合は一人でもOKなのですが、いろいろなお店を回って商品を比べて選びたいときには一人では難しいので、ヘルパーさんにサポートしてもらいながら選ぶようにしています。 菊池: 何度かご一緒したヘルパーさんだと、好みをなんとなく把握していただいていて、気に入ったものがスムーズに手に入ったなんてこともありますよね。 池松: 確かに、いろいろな商品を比べながら買い物できると楽しいですよね。 私は美術館の企画展へ行く際に同行援護をお願いしたことがあります。その時はヘルパーさんに展示物の説明板を読んでいただきながら、絵の様子なども簡単に説明していただけて楽しかったです。もちろんヘルパーさんによって可能な範囲は違いますが、たまたまその際サポートいただいた方は絵に詳しい方で、いろいろな豆知識なども教えていただけてちょっと得した気分になりました(笑) 松谷: また、病院などでは書類の記入を求められる場合がありますが、スタッフの方が忙しい時など代筆まで時間がかかったり、断られてしまうこともあるんですよね。そういった場合にヘルパーさんと一緒であれば、代わりに内容を読み上げながら記入いただくことができるので助かります。 池松: 確かに書類の記入は一人だと難しいですね。 松谷: これまで話し合ってきた中で、一人で出かけること、誰かと一緒に出掛けることそれぞれに異なる魅力があるのがわかりますね。 例えば、「今これが必要!」と思った時に、すぐ自分で買いに行けるという手段を持っているのは、一人で出かけられることの大きな魅力ですし、誰かの手を借りなくても良いというのはストレスもたまらないという面はあると思います。ただ、どうしても一人で難しいことを同行援護サービスなど周囲の手を借りることで、より外出を楽しめる場合もあるような気がしています。 【終わりに】 今回は一人で出かけること、同行援護サービスを利用して出かけることそれぞれについて話し合ってみました。外出の方法は人それぞれです。自分に合った方法でお出かけの楽しみを広げていきたいですね。 (池松・菊池・松谷記) 毎日の生活で見えない、見えにくいことで生じる お困りごとはありませんか? つぶやきコーナー ~7月のレクリエーション「外食どうしていますか?」から~ 困り事: 【外食】 ・タブレットでのメニュー注文 ・トイレの場所が気になる ・テーブル上の配置が分からない ・自動販売機での食券購入 ・米粒などの食べ残しや食べこぼし ・空いている席が分からない ・行きつけの店しか行けない ・つけ麺が好きだが食べにくそうで頼めない ・いつも決まった店、決まったメニューになる ・店の入り口が分からない ・支払いや椅子の場所がわからないので一人では外食に行けていない ・最近は店員が少ない ・店員が他国籍の方で理解してもらえない時があった ・お水などセルフサービスが多い店は店員に頼みごとが多くなる 【買い物】 ・スーパーでの商品選び/同じ形のパックなど ・野菜など触って確認したいが躊躇してガイドさん頼みになる 【食事】 ・ケーキをフォークで食べるのは大変 ・カップ麺のお湯の量がわからない ・一人の時はサンドイッチなど手で食べられるものになってしまう 工夫: ・自販機をスマホで撮影して確認する ・LINEビデオ通話で家族や知り合いに見てもらう ・アイコサポートやBe My Eyesで見てもらう ・コース料理を注文してお店の人に取り分けてもらう ・お寿司は手で食べやすいものを注文する ・わさびは溶かしてもらう ・テーブル上の配置やトイレの場所は店員さんが水や食事を持ってきたタイミングで聞く ・カウンター席はお店の人と近いので、ある場合はそこに案内してもらう ・取り皿は平皿ではなく小鉢をお願いする ・300円中華など同価格の店は気兼ねなく行ける ・アプリで事前に店の情報を調べていく ・常連になるとお店の人が新商品などを教えてくれる ・日常白杖を出さないこともあるが、勇気を出して白杖を出してお店に入ってみた ・白杖を持ってお店に入ると店員が出てきてくれる ・周囲の人に頼るのもひとつの方法 その他: ・商品が見えないので衝動買いをしなくなった ・コンビニのおにぎりはルーレットのように選んで食べてのお楽しみ ・駅の電気が最近暗いように感じる ・駅のホームから改札が難関、点字ブロックを歩く時に人にぶつかる、電車とホームの隙間に落ちたことがある・近づく電気自動車、自転車、キックボードなどが怖い ・点字ブロック上に駐停車 ・信号で人に合わせて渡りはじめたら赤信号だった ・食器について「割ったときなどの処理や洗い物をどうしていますか?」割れにくい素材のものを使う、ゆっくり触ると手を切らない、同じサイズの皿を使うと扱いやすい 情報: 「ミエルサ」慶應義塾大学の学生が開発したAI搭載の視覚障害サポートアプリ 「ユーメニュー」読み上げ機能のある携帯電話やパソコンから自分でメニューを聞くことができるアプリ 「Be My Eyes」リアルタイムのビデオ通話を通じて、視覚障がい者の「目」になるアプリ 「サリバン+」AI識別で文字、顔、情景を自動で認識し音声で読み上げるアプリ 「Oko」歩行者信号を認識して音と振動で教えてくれるアプリ 「食べログ"盲目のグルメ"さんブログ」https://tabelog.com/rvwr/007930712/ ご協力いただいたみなさま、ありがとうございました! (和田 その他スタッフ 記) スマホ操作のき・ほ・ん No.5 -SiriやGoogleアシスタントを活用しよう- ?  このコーナーも5回目となりました。  スマホを音声読み上げを使って快適に操作するにはスワイプ等の基本ジェスチャーの精度をあげ、画面の基本的なレイアウトを把握して効率よく探ること、最後まで音をしっかり聞くことがポイントだと説明してきました。上記のポイントをつかんで、ある程度操作がさくさくできるようになってきても、操作が面倒に感じる場面があると思います。  そんな面倒に感じる時こそ、iPhoneで使えるSiriやAndroidスマホで使えるGoogleアシスタントなど、声でスマホを操作できる機能を活用しましょう。  Siriは「Hey Siri」、Googleアシスタント(OKGoogle)は「Hey Google」の設定で自分の声を登録するとスマホに触れなくても声だけで起動することができます。  どういう質問やお願いに対応してくれるか下記に一例をあげます。  「タイマー3分設定して」 「7時にアラーム設定」 「カメラ起動して」「新宿区の天気予報を調べて」「カレンダーに明日12時から友人とランチの予定を登録して」「日点に電話を掛けて」「自立支援室にメールして」「帰りにケーキを買うとメモして」「1ドル何円?」「ベートーヴェンの第九交響曲を流して」「ウェブで日本点字図書館の歴史を調べて」「ここから高田馬場駅まで徒歩で何分?」などなど。 上記以外にも、「早口言葉言って」などいろいろな質問に対応してくれます。  なお、SiriとGoogleアシスタントで機能面で大きい違いはありません。  ただ、YouTubeでビートルズの曲を再生というとSiriはウェブ検索結果を表示するところまでしか対応しませんが、Googleアシスタントだとやはり自社サービスのYouTubeだけあってYouTubeを起動して曲を再生させるところまで一声で全部やってくれます。もちろんその逆でSiriのほうが上手に対応してくれる質問もあります。  最後に、私は昔、英語を話せるようになりたくてGoogleアシスタントに英語で話しかけ、アシスタントが英語で答えてくれると喜んでいたのですが、アシスタントのネイティブ英語が早くて聞き取れず、しかもアシスタントの設定が英語に切り替わってしまい日本語に直すのに苦労したことがあります。  みなさんも自由な発想でSiriやGoogleアシスタントに話しかけて、いつもの操作を楽にすると同時に会話を楽しんでみてはいかがでしょうか? (清水 記) -本文終わり-