日点自立支援室ニュースレター Vol.19 2025年夏号 目次 ごあいさつ・・・2 爪切り、どうしていますか。・・・3 エンジョイ!ブラインド・ロービジョンライフ -どうしてますか?夏の外出-・・・6 『にってんセレクトパックサービス2025夏』のご案内・・・11 点字ブロック(誘導ブロック)を使わずにJR高田馬場駅(戸山口)から日点まで歩くとしたら・・・13 夏の歩行訓練の熱中症対策について・・・16 ごあいさつ  今年は梅雨入り後も気温の高い日が多く、6月から夏が続いているように感じられますね。 梅雨明けの1週間前、気温が下がったとある日に上野の不忍池に蓮を見に行きました。大きな丸い葉がひしめき合うように広大な池一面を覆い、葉の上には沢山のピンク色の花達が顔を出していました。池の南側には蓮見デッキと呼ばれるコの字型の浮桟橋があり、デッキの頭上には3000個の風鈴が吊るされていました。当日は風がよく吹いており、風鈴は大音量で忙しなく鳴り響いていました。  デッキからは間近に蓮を見ることができ、デッキの手摺りを越えて咲いている花がいくつもありました。顔を近づけて香りを嗅いでみると、濃厚な甘さとハッカのようなスーッとした清涼感が混ざった香りで、優しく包まれるような、浄化されるような感じがしました。  池の近くには徳川将軍家の菩提寺・寛永寺の時鐘堂があり、朝夕の6時と正午に時の鐘が響きます。いつまでも余韻が残る、心が落ち着く音色で、江戸時代から変わらない音色なのだそうです。 不忍池や時鐘堂がある上野恩賜公園はJR上野駅公園口から徒歩5分、池の周りは遊歩道になっています。  暑さはまだ暫く続きますが、涼しくなったらお散歩に行かれてみてはいかがでしょうか。 (市川 記) 爪切り、どうしていますか。 気づいたら伸びている爪。できることならば手も足も自分で解決したいものです。お困りごとのひとつに挙げられる「爪切り」を、7月26日のレクリエーションで取り上げたので、報告します。 最初に、参加者による爪切りのお悩みや工夫について ・爪をはさむところが直線になっているタイプの爪切りで、手も足も切っている ・100円ショップで購入した爪切りで問題なく使えている ・爪をはさむところがカーブタイプのいわゆる一般的な爪切りを使っているが、爪の端に爪の切り残しができてしまうと、ひっかかりやすくなって困っている ・手はカーブタイプ、足は直線タイプと爪切りを使い分けている ・爪切りで切った後には100円ショップの紙製のつめやすりで整えている ・爪切りは使わず、手も足も小まめにステンレス製のやすりを愛用している ・日本製の切れ味のいい爪切りをネットで探して使っている ・通院時に医療スタッフに切ってもらっている ・家族に切ってもらうが、自分の好みの形でなかったり、深爪にされてしまう ・足の爪は、伸びすぎると靴下にひっかかるので、もっと頻繁に切りたいけれど、体が硬くて前かがみの姿勢が大変で、つい億劫になってしまう さらに、切った爪の始末については、ケースつきの爪切りを使っている、ゴミ箱の上で切る、新聞を広げた上で切る、ビニール袋を用意してその中に手または足を入れて爪を切るなど。 爪切りを当てる順番では、指のカーブに沿ってちょっとずつ爪を切っていく人、中央から切ってから両端を切る人と様々でした。 さらに、足の場合は、いすに座って、座面に切る方の足を立て膝にしてかがむ姿勢で切る人、床に体育座りで切る人と2通りありました。 参加者に最も関心が集まったのは、やすりです。ステンレス製、ガラス製のほか、紙製のものもあります。特に、紙製の15cm位の長いタイプのものであれば、足の爪を整える際にも深くかがまなくて便利という声もありました。さらに、爪の表面をつるつるにするタイプの紙やすりには、みなさん興味津々でした。ただ、やすりは調子にのって動かしているとどんどん削れてしまい、爪が薄くなると皮膚を傷つける原因にもなりかねません。やすりは、爪を切った断面に対して直角に当てることがポイントと参加者で共有しました。 それから、自立支援室から100円ショップや用具で販売している爪切りグッズ紹介コーナーでは、 ・爪をはさむところが直線タイプの爪切り:特に、足の爪は切りやすいという意見が多かった。 ・ステンレス製のやすり:手でも足でも使いやすい ・ガラス製のやすり:爪の表面にも使えるので、筋の入った爪がつるつるになる ・小さめで爪を挟む位置が斜めになっているタイプの爪切り:ささくれや切った後に両端にとがって残ってしまった爪を切るのに便利  このように、爪切りを当てる順番も含め、方法も工夫も個性色々でした。中には、親指の爪は、マイナスドライバー代わりに使っているというツワモノもいらっしゃいました。 最後に、参加者同士で情報共有した「爪切り」のコツは、 ・爪切りで爪をはさんだら、ゆっくり切るようにすると爪だけか指もはさんでしまっているかわかる。つまり、勢いよく爪を切らないこと ・爪切りを使った後は、自分の好みで選んだやすりで整えること 今回、切るほど爪が伸びているという方はいなかったので、実際に爪を切る場面はありませんでしたが、わいわいがやがや、爪切りテーマに賑やかな2時間となりました。 爪が伸びてきて、どのようにしたらいいか知りたい方は、訓練の際にお気軽にスタッフにお声かけください。爪切りや爪やすりの当て方を一緒に考え、アドバイスいたします。 (加藤 記) エンジョイ!ブラインド・ロービジョンライフ ~どうしてますか?夏の外出~ 夏は何かと外出の機会が多くなりがちですが、酷暑や急に降る雨など、特に昼間の屋外を歩くには辛い季節でもあります。 そこで今回は、視覚障害者の視点から、当事者スタッフ3名が外出時の困りごとや工夫などについて話し合いました。 菊池: 最近は、男女問わず暑さ対策に日傘を使う方が多いと聞きますが、お二人は使われていますか? 松谷: 私は使っています。 池松: 私はまだ使ったことがないのですが、効果はいかがですか? 松谷: 体感としてはかなり違いますね。特に日差しが強い日は日傘を使うとだいぶ暑さが軽減される感覚があります。 ツバの広い帽子をかぶるという方法もありますが、それだと少し周囲の音の聞こえ方が変わってしまうこともあるので、日傘の方が私には合っている気がしています。 菊池: 確かに、帽子は蒸れたり髪型が崩れてしまう場合もありますよね。 ただ、日傘をさしていると、周りの人に傘が当たらないかが少し心配なのですが、そのあたりで気になったことはありますか? 松谷: 今のところ、周囲の人に接触して困ったことはあまりないですね。狭い道などは少し注意が必要ですが、気を付けつつ使えば問題ないのかなと思います。 池松: なるほど。日傘はまぶしさ対策にも役立ちそうですね。 私はここ数年、まぶしさを敏感に感じるようになってきたので、去年サングラスを初めて購入しました。洋服店で販売されていた1000円程度の製品なので、専用の遮光眼鏡には劣りますが、それでも少し快適に歩けるようになりました。 菊池: 私は2年ほど前から夏は専用の遮光眼鏡を使用していますが、やはりまぶしさが軽減されるのはありがたいです。 池松: 夏は暑さだけではなく、ゲリラ豪雨など急に降る雨にも悩まされます。特に白杖と傘を同時に持つと両手がふさがってしまい歩きづらいです。 菊池: そうですね。レインコートを着るという方法もありますが、電車やバスに乗車するときは濡れたままというわけにはいかず、脱いだり着たりが煩わしいので、私は結局傘を使っています。 松谷: 私は最近、ワンタッチで開いたり閉じたりできる晴雨兼用の折りたたみ傘が発売されたと聞いて気になっています。ワンタッチで開く傘はこれまでにもありましたが、閉じるものは使ったことがないので試してみたいと思っています。 池松: ワンタッチで開閉できる折りたたみ傘、以前に使っていたことがあります。確かに、片手に白杖を持っているときにワンタッチで開いたり閉じたりできるのは便利でした。ただ、特に閉じるときは自分で動かすものに比べて、周囲の人を巻き込まないように注意する必要があると感じました。 また、製品によっては途中まではワンタッチで動くものの、最後の固定は両手を使わないといけないものもあるので注意が必要です。 松谷: なるほど。自分にはどんなものが合っているか実際に触れて試してみるのが大事ですね。 池松: 傘といえば、ガイドヘルパーの方など誰かに誘導してもらうとき、一人ずつ傘をさすとぶつかって歩きづらいですよね。お二人は何か工夫されていることはありますか? 菊池: 二人で入れる大きなサイズの傘が発売されているので、そういったものを使う方法もありますよね。 松谷: 私は、雨が強く降っているときにヘルパーさんと歩く場合、コンビニなどで売られているようなフード付きのレインコートを着ています。ヘルパーさんにはご自身に雨が当たらないよう傘をさしてもらい、私がフードを被ればお互い濡れずにすみます。また、男女兼用でフリーサイズのレインコートであれば、大きめに作られているものが多いので、リュックやカバンの上から着ることができて便利です。 池松: なるほど。コンビニで売られているようなものであれば手軽に入手できそうです。 情況や自分の好みに合わせて工夫しながら、夏の外出を楽しみたいですね。 ※本文内で話題となりました、二人でも使える大きな折り畳み傘については、当館1階のわくわく用具ショップでも取り扱っています。ご興味のある方はぜひ1度触れてみてください! また、このコーナーで取り上げて欲しい話題がありましたら、お気軽に支援員までお伝えください。 (池松・菊池・松谷記) 『にってんセレクトパックサービス2025夏』 のご案内 7月レクリエーション第一弾「好きな本を好きな時に!日点の図書館サービスあれこれ」でもご紹介した、図書情報課(本館2階)のサービスを ご紹介します!! 7月17日(木曜日)から9月17日(水曜日)まで提供を行っています。 セレクトパックの種類 ※すべて音声データです。 1. サピエベストリーダーセレクト サピエ図書館で人気のある図書を教養・文学取り混ぜて25タイトルセレクトしました。毎回、1番人気のセレクトです。 2. Amazon オーディブルセレクト プロのナレーターや俳優、声優のかたなどが読み上げた本を有料提供しているAmazonオーディブルより今年も22タイトルの音源を提供いただきました。 3. お金は大事だよセレクト 経済学など堅い資料ではなく、日常で使えそうなお金に関する比較的新しい教養図書と、お金をテーマとした文学作品あわせて27タイトルをセレクトしました。 4. 百万石の留守居役シリーズ一気読みセレクト 今年3月に亡くなった人気作家・上田秀人の時代小説で、吉川英治文庫賞を受賞した「百万石の留守居役」シリーズの全17巻を収録したセレクトです。 5. 夏の福袋セレクト バラエティに富んだ図書を22タイトル詰め込んだ特別なパックをご用意しました。どんなタイトルが入っているかは届いてからのお楽しみ。そのため、このパックの目録のご案内はございません。 ★申し込み方法★電話または来館 1.日本点字図書館図書情報課に登録する。 2.希望するセレクトパック名を伝える。 3.4GB以上のSDカードを図書情報課に送る、またはご持参。 ※16GB以上のSDカードであれば、5種類すべてのセレクトパックを1枚にまとめることもできます。この「5パックおまとめ版」をご希望の場合は、その旨をお伝えください。 なお、セレクトパックサービスの初回ご利用時には、ダウンロードサービスの利用登録が別途必要です。 セレクトパックの目録は、以下に掲載しています。 ◎日本点字図書館ホームページ 「にってんセレクトパックサービス2025夏」タイトル一覧 ◎「にってんデイジーマガジン8月号」 お申し込み・お問い合せ  図書情報課貸し出し担当  電話03-3209-2442(直通) (和田 記) 点字ブロック(誘導ブロック)を使わずに JR高田馬場駅(戸山口)から日点まで歩くとしたら  タイトルに掲げた通り、JR高田馬場駅戸山口改札から日点までの道のりを、往復誘導ブロックを使わずに歩く方法を一つ提示してみます。私ならこう歩く、歩けるという1例だと思って読んでいただければと思います。  改札を出て左の壁が切れたら左折します。天井の低い山手線と西武新宿線のガードをくぐり終えると正面は突き当り、左に伸びる上りスロープが出てきます。右へ曲がる人もいますが、右側は上り階段になっています。日点へ行くには左へ曲がり、スロープを上ります。この時線路と平行に歩いています。  スロープを上りきると線路と平行な道路①と、線路から直角に伸びる道路②が出てきます。スロープを登り切ったところで90度右を向くと、②の道路に入ることができます。②の道路は上り坂になっています。坂道を登りきると線路と平行な車通りのある片側1車線の道路が出てきます。つつじ通りと言います。信号機のある十字路になっています。つつじ通りには歩道があるので、右へ曲がって歩道に上がります。歩道に上がって10メートル進むとつつじ通りを渡る横断歩道があります。横断歩道の手前まで車道側はガードレールになっています。ガードレールの切れ目のところに歩行者用信号機の押しボタンがあります。押しボタンはタッチセンサー式で、24時間押しボタン式の信号機です。  横断歩道を渡ったら十字路の方へ戻ります。つまり、横断したら左へ曲がり、歩道が切れたら右へ曲がります。約40メートル進むと十字路になっています。交差する道路は左から右方向への一方通行です。この十字路を右へまがります。歩道はありません。後ろからくる車に注意しながら道路の右側を歩いていきます。この道路の左側に日点の建物がありますが、十字路の交差点から40メートルほど離れています。正面玄関には誘導鈴が流れているので、音が聞こえたら90度向きを変えて道路を横断すれば日点の玄関に入ることができます。なお、横断の際には左側から車がこないか、左右から自転車等が来ないか十分注意をします。往路はこれで完成です。  次は復路です。  玄関を出たら、右からの車、左右からの自転車等に注意しながら道路を横断します。横断したら右を向き40メートル先の十字路まで歩きます。十字路に着いたら左折します。左折したら車通りのあるつつじ通りまで歩きます。つつじ通りの前まで来たら左側の歩道を探り、左折するように歩道に上がります。つつじ通りを横断するためには押しボタン信号機を押す必要があります。押しボタンは横断歩道の左端に付いています。歩道の車道側には対岸と同様にガードレールがついています。歩道に上がった位置から押しボタンまで約10メートルです。  信号が変わったらつつじ通りを横断し、歩道を右方向へ進みます。10メートルほど進むと歩道が途切れるので、左折します。左折すると40メートルほど下り坂が続きます。坂が終わるとT字路が出てきます。時々車が通るので安全確認して横断します。横断してから左折すると下りスロープが出てきます。下りスロープがない場合は、スロープ入り口から左にそれていることが想定されるので、線路と平行に右方向へ移動するとスロープの入口があるはずです。  スロープを下りきると正面は突き当り(上り階段)になっており、ここを右へ曲がります。曲がるとすぐにガード下へ入ります。ガード下を30メートル程度進むと右側の壁が切れ、JR戸山口の改札が出てきます。改札を通りすぎてしまうとガードが切れて屋外に出てしまうので行き過ぎたことが分かると思います。以上で復路は完成です。 いかがでしょうか?経路の構成、道路の構造をイメージできるようにしておくと迷ったときにも修正がしやすくなりますよ。(小林 記) 夏の歩行訓練の熱中症対策について  今年の6月から労働安全衛生規則の改正省令により、職場における熱中症対策が義務化されました。対象となるのは「WBGT(暑さ指数)が28度以上または気温が31度以上の環境下で、連続1時間以上または1日4時間以上の作業」を行なう場合で、歩行訓練も該当します。自立支援室としましては、これまで通り暑さ指数が31度以上になった場合は訓練を中止します。30度以下で訓練を実施する場合は、黒球式熱中症指数計を携行し、訓練生の皆さんおよび職員が熱中症にならないよう細心の注意を払います。訓練中に熱中症が疑われる症状が出た場合は、直ちに訓練を中止し、呼びかけによる体調確認、涼しい場所への避難、身体冷却、水分・塩分補給等を行ないます。呼びかけに応じない、自力で水分補給が出来ない、症状が良くならない場合は、救急車の要請や医療機関への搬送を行ないます。  これらの応急処置について、歩行訓練を受けられているかたには担当職員から個別に説明をいたします。  夏の歩行訓練は身体に堪えます。暑さ指数に拘わらず、体調のすぐれない日はお休みするようにしてください。また、涼しくなるまでスマホや点字等の訓練に変更も可能ですので、お気軽に職員にご相談ください。 (市川 記) -本文終わり-