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理事長就任のご挨拶

理事長 長岡英司の写真
理事長 長岡英司 (ながおか ひでじ)

田中徹二前理事長の後を継いで、4月1日付で社会福祉法人日本点字図書館の理事長に就任いたした長岡英司でございます。これまで5年間の館長在任中は、皆様方に一方ならぬお世話になりました。そのご厚情に、改めて心より御礼申し上げます。立場は変わりますが、これまでと同様、当法人が社会で真に役立つ存在として成長し続けられるよう、微力ながら努めて参る所存です。引き続きのご指導とご鞭撻を、何卒よろしくお願い申し上げます。

私は、東京生まれの現在71歳の視覚障害者です。盲学校在学中の12歳のときに完全に失明しました。当時の盲学校では、まだ録音図書はほとんど使われておらず、いわば点字一色の世界だったと記憶しています。点字受験で大学の数学科に進学してからも、学業の主要な手段は点字でしたが、丁度当時始まった公共図書館での対面朗読サービスにも大変助けられました。この大学時代以降、今日に至るまで、多くの点訳者や朗読者の皆様に、様々な場面でお力添えをいただいてきました。

大学院の修士課程を修了した後は民間企業で、墨字(普通の文字)を触覚で読み取るための電子装置に関する仕事を2年半ほど行いました。転職したリハビリテーションセンターでは、電子計算機科の職業訓練指導員として、視覚障害者の就職や復職を支援する仕事に10年余り従事しました。その後は、視覚障害者と聴覚障害者を対象とする大学で、情報処理教育や修学支援の仕事に、教員として26年間携わりました。そして、当館で働き始めたのは6年前の4月です。

この数十年を振り返りますと、視覚障害者の生活は、ICT(情報通信技術)の進展とその活用で、大きく様変わりしました。読書をめぐる状況も例外ではありません。点字図書は、電子データでも提供されるようになり、従来の紙の点字図書では避けられなかった不便さから解放されました。録音図書は、朗読のデジタル録音をデイジー(DAISY : Digital Accessible Information SYstem)形式のデータに編集した音声デイジー図書になり、アナログ録音のテープ図書に比べて利便性が飛躍的に向上しました。このほかに、墨字の電子データを合成音声で読み上げさせて音声デイジーと同じ操作で聴く、テキストデイジー図書も増えています。

視覚障害者用の図書は、このように電子データ化が進みました。それに伴って、図書を製作する方法も変わりました。点字図書は、PC(パーソナルコンピュータ)での点訳で製作されるようになり、用紙に直接に点字を打つ点訳は、今ではほとんど行われていません。音声デイジー図書もテキストデイジー図書も、PCを使って製作されています。図書製作の担い手であるボランティアの皆様は、これらの新しい方法や手段を前向きに受け入れてこられました。そして、読書ニーズの多様化に対応するために、多彩な図書等の点訳・朗読・電子データ化を手がけてくださっています。こうしたご尽力が視覚障害者の読書の可能性の拡大に、より有効に活かされるようにすることが、当館の基本的な使命の一つです。

一方、電子データ化された図書の利用には、点字電子機器やデイジー機器を使う必要があります。また、PCやスマホ(スマートフォン)等の情報機器とインターネットを活用できることが有効です。しかしながら、それらによる可能性や利便性をまだ享受していない視覚障害者が少なくありません。そのような皆様を対象に、読書に役立つ機器類の情報を提供することや、利用技術の習得を支援することも、当館の重要な役割です。

視覚障害者の読書環境や情報環境の改善には、これらをはじめ、多面的な取り組みが必要です。利用者の皆様のニーズに柔軟に対応できる施設、支援者の皆様にお力添えの意義や効果を十分に実感していただける施設を目指して、職員一同、力を尽くして参ります。引き続きのご支援を、くれぐれもよろしくお願い申し上げます。

2022年4月1日

※前理事長・田中徹二は、会長に就任いたしました。


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