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50年を過ぎてこれから

館長 田中徹二

田中徹二写真  51年目に入った平成3年度以後の当館は、名実ともに新時代に突入したと言ってよい。その主流は、コンピュータの導入であった。それまでも図書目録を検索できるNITのシステムや、寄贈を受けたパソコンによる点訳、事務処理などにコンピュータを活用していたが、それが本格化したのである。
 その手始めがパソコン点訳者の養成で、3年度、4年度の2年にわたって実施された。計58人に、購入したパソコンを貸与し、現在、当館の点字蔵書の制作に取り組んでもらっている。
 それに伴い、大量の点訳データを紙に打ち出すプリンティング作業が必要になったので、3階にプリンティング室を設置した。高速点字ラインプリンタESA300Proをはじめ、10機を超すプリンタが、毎日、軽快な作業音を響かせている。
 一方、点字・録音図書目録情報の提供に関し、いっそうの性能の向上を目指して続けられていた研究が終了し、商用パソコン通信網PC-VANと接続された。これによって、全国どこからでも市内通話料金で当館のホストコンピュータにアクセスできるようになったが、5年度から厚生省の委託事業となり、さらに効率化が図られることになった。国立国会図書館の点字・録音図書総合目録のデータが検索できるので、地域の点字図書館などにおけるレファレンス業務が一変するのではないかと期待している。
 貸出サービス業務では、現在、点字・録音図書にバーコードを添付する作業が進行している。データベース用のプログラムが完成すれば、図書データと現物とを照合しながらの入力作業が始まる。それが終われば、一般の図書館なみの事務・統計処理の合理化が図られるであろう。近代的な図書館に脱皮できる日も近いのである。
 テープ制作にも変化があった。録音用デッキをオープン方式からカセット方式に換えたことである。オープンの録音機が入手できなくなってから久しいが、4年度までは、朗読ボランティアになんとかオープンでマスターテープを制作してもらっていた。
それが行き詰まり、当館用に改造されたカセットデッキの導入に踏み切ったのである。
 こうした改革を断行しながら、当館はさらに日々変動しつつある。5年度からはアジア盲人図書館協力事業を発足させ、アジア太平洋地域の発展途上国における視覚障害者の生涯教育に寄与しようとしている。
 さらに21世紀を見通すとき、通信技術の発達によって情報伝達手段が急速に変化することが想像される。今、録音図書にはなくてはならないアナログ録音方式も、この世から消滅してしまうだろうと予測されている。
 そんな時代を迎えたとき、当館はどうなるのであろうか。ただ手をこまぬいているわけにはいかない。少しでも先を見つめ、立ち遅れないような準備をしておかなければならない。全国の視覚障害者に、正確で、一刻も早い情報が提供できるように、常に新しい情報の収集に心掛け、その対応に粉骨砕身しなければならない。それが視覚障害者の期待に応えるために、私どもに課せられた責務であると思う。

『日本点字図書館五十年史』より




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