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点字図書ができるまで : 館内バーチャル見学
1.図書の選定
日本点字図書館では、自館に加える新たな蔵書を、毎月1回の「蔵書選定会議」で決定しています。毎回、利用者からのリクエストを含む約60タイトルの候補から点字図書・録音図書にふさわしいものをそれぞれ数10タイトルずつ選んでいます。
今回は、点訳が決まった手塚治虫の著書『昆虫つれづれ草』が点字図書になるまでを見ていきましょう。
2.ボランティアさんに点訳依頼
ボランティアさんに原本をお渡して点訳を依頼します。当館の蔵書点訳ボランティア養成コースには60年以上の歴史があり、依頼するボランティアさんはすべてその卒業生です。
3.パソコンを使って点訳(ボランティアさん宅)
かつては1点1点、紙に直接打っていましたが、今の主流は「パソコン点訳」。といってもパソコンが自動的に変換していくのではありません。キーボードの6個のキーを点字の6点に当てはめ、点字の形どおりに入力していきます。点字の表記には「分かち書き」などの独特なルールがあります。
4.読み方調査はこまめに(ボランティアさん宅)
点字は表音文字ですので、漢字を正確に読めること、正しい読み方を調べられることが必要です。
調査の方法には、さまざまなものがあります。一般の国語辞典のほか、必要に応じて「人名」・「地名」・「動植物」など専門の辞典類にもあたります。最近ではインターネットによる検索が便利になってきました。
5.困ったときは相談
入力中に生じた疑問や質問には、当館の担当職員がいつでも応じます。メールでの相談は点訳データが添付できるので判断もしやすく便利です。問題の箇所を一部手直ししてよりよい点訳をアドバイスすることもあります。
6.入力後は必ずチェック(ボランティアさん宅)
入力後は何度も読み直し、間違いがないかどうか入念にチェックします。入力ソフトの「音声読み上げ機能」を使っての最終確認は欠かせません。
7.読み合わせ校正
ボランティアさん宅から送られてきた点訳データを専用の点字プリンタで紙に打ち出し、原本との読み合わせ校正をおこないます。
8.間違いはつきもの
読み合わせながら、点字の表記や漢字の読み方、レイアウト処理などが適切かどうかをチェックしていきます。訂正すべき事項があれば校正表に書き出していきます。
9.データを修正
校正表にしたがって点訳データを修正していきます。文字の加除によってレイアウトが乱れることがあるので全体にわたる注意が必要です。
10.最終校正(素読み校正)
修正した点訳データを再度紙に打ち出し、最初とは別の触読者が素読み校正(一人で点字を通読)します。このとき、触読者は点字で校正事項を書き出します。その後の修正作業は、読み合わせ校正後と同様です。このように、方法を変えて2回以上の校正をおこなうのが理想的です。
11.プリントアウト
最終的に完成した点訳データを、一般図書のように紙の両面に打ち出します。写真の機械は、1ページを4秒足らずで打ち出すことのできる高速点字プリンタです。
12.カット
点字プリンタ用紙は、天地がつながった連続用紙なので、専用のカッターで1枚ずつ切り離します。
13.製本(バインダーに綴じる)
蔵書専用のバインダーで製本します。読んでいる箇所にはさむ栞ヒモも付けます。バインダーは、郵送での貸し出しに耐えられる丈夫なものを使用しています。
14.装丁(背文字を貼る)
バインダーで閉じられるページ数には限りがあるので、点字図書はほとんどの場合、複数巻に分冊されます。今回点訳された『昆虫つれづれ草』は全3巻になりました(写真左端は原本)。バインダーの背には、書名・著者名・巻数・分類番号を記したラベルを貼ります。
15.装丁(点字ラベルを貼る)
バインダーには、読者が触ってすぐに何の図書かわかるように、書名や巻数を点字で記したラベルも貼ります。
16.配架
点訳開始から約4ヶ月。書庫に収められた点字図書『昆虫つれづれ草』は、ようやく当館の新たな蔵書となりました。あとは貸し出されるのを待つのみ!
本文 おわり